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冬至に向かう、この時季。
日暮れは、文字通りつるべ落としとなる。
そんな薄暮に沈みかけた窓の向こうの景色に幕を引くように、
厚手のカーテンを引く。
そして、部屋の灯りを点けると同時に、リビングのテーブルの上で
スマートフォンが再び震えだした。
さっきの間違い電話があってから、まだわずかに一時間余り。
だから、自然と真友子の口にも苦笑が浮かび、呟きも零れる。
「まさか、また間違いじゃないわよね」
しかし、手にした液晶画面に目を落とした彼女は、思わず小さく目を瞠った。
それは、「080」から始まる自分とそっくりの番号。
そして、もちろんそれが誰なのかを、もう真友子は分かっている。
しかし今度は、迷わず電話を耳に充てた。
「もしもし。見付かったんですね?」
「あれ? よく僕だってわかりましたね」
「まぁ、見慣れた番号ですし」
ですよねぇ。
そう言って笑った声が、無事にスマホが戻ったと律儀に報告をしてくる。
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