終末セール

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  ドアの前に向かい、いち、に、さん。小さく数を数えて、私は深呼吸をします。  カギはかかっていません。私が開けたからです。誰もいません、ええ知っています。  部屋は真っ暗です。電気はついていません。当たり前です。歌でも歌いましょうか?いいえ、やめておきます。いつ帰ってくるかわからないですものね、ええそうです、そうです……なら、心の中で小さく口ずさみましょう。階段を上がる音に合わせて、わん、つー、すりー、私は数えては、歌っています。  階段を上がれば、部屋がわかれています。私の目的地は、階段を上ってすぐです、ドアがあきっぱなしの部屋です。あきっぱなし、というより、ここにはドアがありません、何をするか、わからないから。見張る為に開けているのです。  でも、今は誰もいません。  私は部屋に入り、服を脱ぎ捨てます。白く染まったセーラー服は、そろそろ洗わねばなりません、誰もいないうちに、そうです。  私の部屋――私の部屋です。そう、ここ、今誰もいないこの家の二階、階段を上がってすぐのドアのついていない部屋。ここは私の部屋でした。     
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