終末セール

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 私は、本当はお客さんとして生まれてきました。でも、いつのまにか店員です。  どちらでもいいのです、どちらでも私は笑うのです。でも私はこの家に、お客さんとして生まれてきました。そのはずなのに、誰もそれを覚えていません。私はこの世界のこの家の店員です。他はみんなお客さんです。いつのまにか、そうなっていたのです。  私はお客さんに一生懸命サービスします。私はできのわるい店員です。  どこでも同じでした。私とおなじセーラー服を着た人は、店員でありお客さんでもあります。でも、私は店員だけです。店員でしか、ありません。  みんな私をぶちます、お前は出来が悪い店員だと、家の人も、それ以外の所でも。  つらくなんてありません。   けれど、この店を見つけてしまいました。見つけてしまったのです。鏡の向こうの世界、鏡の女の子の住む世界。   鏡と向き合うと現れ――いいえ向き合わない限り、現れない世界です。これは、幸せでしょうか?それとも不幸せでしょうか……    ――そっちで働きたいです、私は笑います。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加