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「ナニそれっ! 嘘でしょっ! マジッ? 信じらんなぁいっ!」  赤毛のツインテールを振り回し、あたしは一秒にも満たない早さで叫んだ。  大人三人が並んで手を回せるほど大きな大理石の柱十二本で支えられた、バルコニー付大講堂に甲高い声が反響して五十八人のクラスメイトが全員こちらに顔を向けたけど、それどころじゃない。 「仕方ないだろ? だいたい、事あるごとにツイてないのはサイの方。俺のせいじゃないんだから、当たり散らすのは止めて欲しいな?」  あたしが頭から湯気を出しそうなくらい怒り狂ってる前で、シロンは涼しい顔。悪戯っぽくトビ色のドングリ眼をくるりとまわして、そばかす混じりの頬を引きつらせ笑いをこらえている。  ああもう、ますます腹が立ってきた! 「笑ってる場合じゃないんだからねっ! ナンであたしが……よりにもよってあんたと組まなきゃいけないのよ? それも『桃色猫組』って……知らないの? 毎年、『桃色猫組』は落第点を取るってジンクスがあるんだよ!」  あたし達の学校は、ハロウィンの日に進級試験がある。男女二人でペアを組み、決められた課題をクリアしなくてはならないのだ。     
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