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先生が怒鳴ってる、もう他のチームは出発したんだ。あたしは先生に手渡された『桃色猫組』のエンブレムを、なるべく目立たないように腰に付けた。フリルの陰になるから、何とか我慢できそう。ああ恥ずかしい、ピンクの猫がにたりと笑っている五センチ四方のエンブレム。こんなのつけるくらいなら、『黄色豹組』や『赤色牛組』の方がマシ。それにどうして男子は、上着の内側につけることが許されるわけ? 男尊女卑じゃない。一緒に受け取った羊皮紙を紐解き、目的地を見てなお落ち込む。
「嫌だ、あたしの生まれた時代と場所じゃないの」
なんて不運なんだろう、二度と思い出したくなんか無かったのに。
「やっぱりついてないのはサイの方だ。頼むから俺の足を引っ張るなよ」
ホンっと、むかつく! ガツンと何か言い返してやろうと思ったら、先生の描いた魔法陣が蒼白く輝いた。ああもう、覚えてろ! あんたなんかに負けないから!
教室の窓がゆがみ、黒いビロードのカーテンがふわりと浮いた。身体も蒼白く輝いて、指の先から透き通っていく。ふわふわと、身体は宙を漂う感覚。意識はすうっと、白い光の中に吸い込まれていった。
二十一世紀のアメリカで、あたし達は夢を狩る。その夢が未来に与える影響が大きいほど、高い合格点がもらえるのだ。
あたし達は何? 魔法使い? ううん、違う。
世界の理(ことわり)を支配する『賢者』候補生なんだから!
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