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それにしても楽しそう! ホールではバザー方式でクッキーやケーキ、ソーダ水が売っている。手作りのアクセサリーや、小物。パッチワークのテーブルクロスやレースのソファカバーもある。この売り上げを、孤児院に寄付するんだ。そっか、そう言えばハロウィンの時期は少しだけシスターの機嫌が良かったな。
あたしは赤ん坊の時、孤児院前に捨てられていた。
孤児院での思い出は、ひどいものばかり。この髪のせいで虐められたし、着る物も食事も粗末だった。でもハロウィンの頃はパンプキンマフィンにパンプキンパイをお腹いっぱい食べられたし、厳しくて恐いシスター達も少し優しくなる。
だけどその後は、クリスマスに向けて寄付を貰いに回ったり、奉仕活動をして孤児の存在をアピールしたり、嫌なことばかりさせられた。
吐く息が凍るほど寒い朝に、慈善バザーのチラシを配ったこともある。あたしはまだ五歳だったけど、防寒着として役に立たないようなボロボロのコートを着て、あかぎれで血の滲む手を握りしめ一軒一軒ドアをノックした。辛くて、悲しくて、チラシを渡しながら泣きそうになった。
チラシ配りから帰ると、いちばん年の若いシスター・エレクトラが温かいミルクを入れてくれた。「他の子には内緒よ」と言って、お砂糖もたくさん。
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