クラブ・ローゼンのクリスマス(アルフォンス×ベリアンス)

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 それから、後日お礼にと店にきて、相変わらずフレンチトーストを頼む彼を店の従業員もすぐに覚えた。当然だ、フレンチの店にランチで来て、頼むのがメニューにないフレンチトーストなのだから。  でも、作ってあげたかった。食べる事で彼が少しでも元気になれるなら、それでいいと思っていた。  そんな関係が何ヶ月か続いて、アルフォンスはベリアンスと個人的な話をするようになった。部下の事や、家族の事。  でも仕事の事は一切、話さなかった。  不器用に、ぽつぽつと話す彼を放っておけなくなったのはアルフォンスの方。そこから猛アタックをかけたが、職業柄を考えてなかなか応じてくれなくて苦戦して、更に数ヶ月。  彼が根負けしたのが、二ヶ月ほど前だった。 「ケーキ、食べるかい? 俺が作った物じゃないんだけれど」 「お前の店だろ?」 「俺の友人が、恋人の為に作って残してったザッハトルテなんだ。コースの最後に出してくれって、頼まれてね。美味しいよ」  冷蔵庫に残っているザッハトルテを切り分けて、ついでに苺サンタも乗せた。それを見たベリアンスは、恥ずかしそうに睨んでいる。 「可愛すぎるだろ」 「恋人に合わせたんだよ。味は本格的だから食べてごらん。繁華街にあるクラブ・ローゼンのメインシェフのお手製だ。なかなか食べられないよ」     
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