零 『本物?』

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「どうなってんだ、こいつら…」  さすがに攻め疲れした不良少年たちは、肩で息をしながら動きを止めた。 ギッと奥歯を噛み締めて悔しがってはいるが、相手の身体能力の高さに、早くも舌を巻いている様子だ。  一方、四人組の方は息一つ上がっていない。 それどころか、黒い仮面の下で笑みさえ浮かべているようだった。  そして、逃げる一方だった四人組が一転、目にも留まらぬ反撃に出る。 いや、これは殴ったり蹴ったりではない。ある者は短銃を構え、ある者は小型ナイフを握り、その銃口、刃先が真っ直ぐに二人の不良少年たちに向けられているのだ。 「最初に言った通り、借りるのは顔だけだ。つまり、身体は狙わん」  四人組の誰かが言った。 見れば、いつの間にそのような事が出来たのか、不良少年たちの額にはその真ん中に、それぞれ直径一センチ程の、丸く赤いシールが貼られている。  さっき不良少年たちの攻撃をかわしている最中に、紛れもなくこの四人組によって貼られたものと思われるが、これは貼られた本人さえも気付かない早業だった。 「逃げるがいい」 「さぁ、走って!」  言われるままに逃げたのではない。言われなくったって、不良少年たちは駆け出していた。 「いいぞ、その調子だ」 「そうそう、元気に動き回ってね」  奇妙な笑い声をあげながら、四人組が煽る。  銃声…。 何かが風を切る音…。  公園の立木を寝床としている鴉や小鳥たちが、一斉に騒ぎ出す。 ピーピーガーガーと鳴きながら、暗い夜空に飛び狂ったのだ。  ──数分後。 静けさを取り戻した夜の公園内には、四人の遺体が残されていた。  一人は、額の真ん中に貼られた赤いシールに弾丸を貫通させ、腰をくの字に曲げて倒れた不良少年。  一人は、同じく額のシールに小型の投げナイフを突き刺して、顔中を紅く染めながら仰向けに大の字を作った不良少年。  残る二人は、パトロール中に騒ぎを聞きつけて駆け付けたらしい制服警官で、やはりこちらも、額に赤いシールを貼られ、そこを的にして一ミリの狂いもなく、弾丸と小型ナイフが命中していた──。
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