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ノアに覚悟の証明を求めたビーダは、薄ら笑いを続けたまま再び立ち上がった。そして傍らのバードルドに命じる。
「隊長。ノア姫様の手錠を、外して差し上げて」
無言で頷き、ノアの背後に回ったバードルドが、ノアの手首を拘束していた手錠を外す。到底ノア一人で暴れて脱出を図れる状況ではないが、ナルナベラ星人のルギャレがライフルを構え、銃口をソニアの頭に向けて牽制した。ノアは痛みの残る手首を指で撫でながら、メイアとソニアに眼を遣る。
「さぁ姫様。証明して頂きましょうか…二人を守るためなら、ご自分は穢されてもいい覚悟がある事を」
ビーダはそう言って、別世界で言う和装風の衣装の大きく開いた袖口に、もう一方の手を入れ、何かを掴み取った。そしてそれを無造作に、ノアの目の前の床に投げ捨てる。金属部分がカチャリ…と小さな音を立てたそれは、犬用の赤い革製首輪だった。
「!!!!」
体を凍てつかせて固まるノアに、ビーダは蔑みの口調で命じる。
「着ているものを下着も全部ここで脱いで、その首輪をご自分の手で、首に嵌めてくださいませ」
突きつけられた冷酷な命令に、ノアは頭の中が真っ白になった。さらに勝手に喋るビーダの声も、ひどく遠くで言っているように聞こえる。
「姫様にはバサラナルムへ着くまでの間、その姿のまま四つん這いになって、生活して頂きますので」
醜悪な言葉を投げかけられても、ノアは何も言い返せない。口の中がカラカラに乾き、形のいい唇がわなわなと震えるだけだ。ノア自身も初めて感じる、いつもとは全く違う体の反応だった。
「ねぇ、姫様。早くしてくださいましな。これでも姫様のあとのご予定は、詰まっておりますのよ―――」
身をすくめたまま、動けないノアの様子を愉しむように、ビーダはさらにおぞましい言葉でいたぶる。
「ラクシャスの指示で、この船の船倉にある大型コンテナの一つを、姫様の調教部屋にしつらえましたの。ウフフ…キヨウの“いかがわしい店”で購入した、いろんな道具も揃えております。そこで姫様におかれましては、ここにいるナルナベラ人の前で、ラクシャスに公開調教を受けて頂きますわ。そうするとそのうち、このナルナベラ人の男達も興奮して来ますでしょ? そしたら―――」
ソファーの背後に居並ぶ巨躯のナルナベラ星人が、薄暗がりの中で肩を揺らせ、早くも期待の息遣いを始めた。ますます悪魔的な表情になったビーダは、「くすくす…」という含み笑いとともに、ノアに絶望を与える。
「姫様のおカラダで、処理してやってくださいませ…全部」
恐怖が…絶望が…氷混じりの風となって、ノアの心を吹き貫いた―――
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