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「麻薬!?」
凶悪な単語に眼を見開くノア。ビーダはまるで、自分の手柄のように言う。
「ええ。このブレット隊長から、サンプルを頂きましたの。なんでも『アクレイド傭兵団』が開発している新薬だとかで、すごい効き目らしいですのよ。名前は……そう、確か“ボヌーク”とか」
「!!!!」
麻薬の名を聞いたノアの意識に衝撃が走る。“ボヌーク”とはノアとノヴァルナが飛ばされた皇国暦1589年のムツルー宙域で、重大問題となっていた麻薬だ。
だが向こうの世界では、豚に似た頭を持つ異星人のピーグル星人が、銀河皇国領域に持ち込んだとされており、現在の銀河皇国中央部のここで、そのようなものが出て来るなど、想像もつかない話であった。
新麻薬の名前を出したビーダに、ソファーの脇に立っているバードルドが、困り顔で告げる。
「ザイード様。ここでその名前を出すのは、ご勘弁を」
しかしビーダは気にするふうもない。バードルドに向けて扇をひと仰ぎして、軽い口調で言い返した。
「いいじゃない。どうせ開発中で、誰も知らないんだし」
誰も知らない…どころではない。ノアは“ボヌーク”が、未来のムツルー宙域で広がっているのを知っており、マフィアのボスであったオーク=オーガーに捕らえられた自分も、危うくこれを打たれるところだったのだ。
その“ボヌーク”を『アクレイド傭兵団』が開発していたのは、ノアにとって驚くべき事実だが、今はどうする事も出来ない。
「フ…効いたみたいだな」
冷めた声で言い捨てるラクシャスの視線の先で、床に寝転がされたメイアは、意識を朦朧とさせているようだった。紅潮したままの顔は天井を向いているが、それを見る眼は虚ろで、半開きの唇からは絶え間なく吐息が続いている。
「どぉ? 天にも昇る夢心地…ってとこかしら? 薬漬けにされてた昔を、思い出すんじゃない?」
するとラクシャスはソファーから離れ、床の上のメイアを両腕で押さえつけた。メイアは体に力が入らないのか、泥酔したように身をよじらせるだけで、ろくに抵抗もできない。
さらにラクシャスは、黒いスーツ姿のメイアの上着をはだけさせ、その下の白いシャツの襟を片手で鷲掴みにして、力任せに引っ張る。
糸のちぎれ飛んだボタンの一つが、この光景を眺めるビーダの爪先に当たって跳ね返ると、大きく引き裂かれたシャツの胸元に、メイアの素肌があらわになった。
「………」
無言のまま、メイアの引き裂かれたシャツの胸元から、中へ右手を滑り込ませるラクシャス。
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