449人が本棚に入れています
本棚に追加
/1292ページ
「!!…や!…やめ…ううッ…あッ…」
それまでよりは強く身をよじるメイアだが、“ボヌーク”の影響下にあるその体の動きは、もはや抵抗しているものか、それ以外の理由のものか…メイア自身も分からなくなってゆく。
「やめなさい、ハルマ!!」
怒声…というより悲痛な声で抗議するノア。しかしメイアのシャツの中をまさぐる、ラクシャスの手は止まらない。息が荒くなったメイアの波打つ姿態は、すでに抵抗のそれではなくなっていた。
「ふむ。この“ボヌーク”とかいう麻薬…皇国内で現在出回っている“ジール”や“マッドヘヴン”より、催淫性は高そうだな」
事務的にメイアの反応を探るような、無感情な声で言うラクシャスだが、繰り返し体をくねらせるメイアの姿を映したその眼は、妖しく輝いている。隠微な光景を見せつけられ、円形ソファーの背後の暗がりに並んで立たせた、ナルナベラ星人の傭兵達が体温を上げていく中、ビーダは扇をパチリ!…と強く鳴らせて閉じると、少々苛立った声でラクシャスに告げた。
「ちょおっとぉ。いい加減にして頂戴、ラクシャス。貴女の相手は、その子じゃないでしょお」
「そうだったな…」
冷たく言い捨て、メイアを床に転がしたラクシャスは、おもむろに立ち上がる。放置されたメイアは、まだ身をよじらせていた。
「あらあら、すっかり火を付けちゃって…もぅ、クールなのは素振りだけで、本当は見境なしなんだから」
そう言ってラクシャスをひと睨みしたビーダだが、その眼はノアに視線を移すや否や、陰湿な光を帯びる。
「でも姫様ぁ。日頃禁欲的な双子の片割れが見せる、こんないやらしい姿…ゾクゾクしちゃうと、お思いになりませんこと?…ああでもこの子、昔は客をとってたんでしたねぇ。だったらむしろ、本性を現したという事でしょうか?」
「………」
無言で眼を逸らすノア。だがビーダの口は止まらない。得意の話術“メンタルドミネーション”で、ノアを追いこみ始めた。
「おや。そう言えば、この子がラクシャスにもて遊ばれてる間、どうしてアタシが顔を引っ叩いた時のように、“私をもて遊びなさい”とか言って、庇っておやりにならなかったのかしら?」
「!!…」
表情を強張らせるノアの、振り向いた瞳を見据えるビーダ。ふん…と鼻を鳴らして見下ろすラクシャス。
「もしかして、叩かれるのは我慢できても…昔のこの子や、そこのソニアちゃんのようになるのは、嫌にございましょうや?」
「わ…私はそんな―――」
「そんな事は、勿論ございませんでしょうねぇ…」
間髪入れずノアの言葉を遮ったビーダは、不意に素早く腰を落としてノアと同じ高さに顔を持って来ると、彼女の紫の瞳を覗き込んで薄笑いと共に告げた。
「では、それをご証明くださりませ」
最初のコメントを投稿しよう!