第17話:風雲児 都の星で ひと暴れ

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  「!!…や!…やめ…ううッ…あッ…」  それまでよりは強く身をよじるメイアだが、“ボヌーク”の影響下にあるその体の動きは、もはや抵抗しているものか、それ以外の理由のものか…メイア自身も分からなくなってゆく。 「やめなさい、ハルマ!!」  怒声…というより悲痛な声で抗議するノア。しかしメイアのシャツの中をまさぐる、ラクシャスの手は止まらない。息が荒くなったメイアの波打つ姿態は、すでに抵抗のそれではなくなっていた。 「ふむ。この“ボヌーク”とかいう麻薬…皇国内で現在出回っている“ジール”や“マッドヘヴン”より、催淫性は高そうだな」  事務的にメイアの反応を探るような、無感情な声で言うラクシャスだが、繰り返し体をくねらせるメイアの姿を映したその眼は、妖しく輝いている。隠微な光景を見せつけられ、円形ソファーの背後の暗がりに並んで立たせた、ナルナベラ星人の傭兵達が体温を上げていく中、ビーダは扇をパチリ!…と強く鳴らせて閉じると、少々苛立った声でラクシャスに告げた。 「ちょおっとぉ。いい加減にして頂戴、ラクシャス。貴女の相手は、その子じゃないでしょお」 「そうだったな…」  冷たく言い捨て、メイアを床に転がしたラクシャスは、おもむろに立ち上がる。放置されたメイアは、まだ身をよじらせていた。 「あらあら、すっかり火を付けちゃって…もぅ、クールなのは素振りだけで、本当は見境なしなんだから」  そう言ってラクシャスをひと睨みしたビーダだが、その眼はノアに視線を移すや否や、陰湿な光を帯びる。 「でも姫様ぁ。日頃禁欲的な双子の片割れが見せる、こんないやらしい姿…ゾクゾクしちゃうと、お思いになりませんこと?…ああでもこの子、昔は客をとってたんでしたねぇ。だったらむしろ、本性を現したという事でしょうか?」 「………」  無言で眼を逸らすノア。だがビーダの口は止まらない。得意の話術“メンタルドミネーション”で、ノアを追いこみ始めた。 「おや。そう言えば、この子がラクシャスにもて遊ばれてる間、どうしてアタシが顔を引っ叩いた時のように、“私をもて遊びなさい”とか言って、庇っておやりにならなかったのかしら?」 「!!…」  表情を強張らせるノアの、振り向いた瞳を見据えるビーダ。ふん…と鼻を鳴らして見下ろすラクシャス。 「もしかして、叩かれるのは我慢できても…昔のこの子や、そこのソニアちゃんのようになるのは、嫌にございましょうや?」 「わ…私はそんな―――」 「そんな事は、勿論ございませんでしょうねぇ…」  間髪入れずノアの言葉を遮ったビーダは、不意に素早く腰を落としてノアと同じ高さに顔を持って来ると、彼女の紫の瞳を覗き込んで薄笑いと共に告げた。 「では、それをご証明くださりませ」  
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