第17話:風雲児 都の星で ひと暴れ

48/49
449人が本棚に入れています
本棚に追加
/1292ページ
   ノアの心が折れ始めたのを見透かしたビーダは、あえてそれを無視し、さらに言葉で追い込んでいく。 「ナルナベラ人は体つき同様、“あっち”の方もスゴいらしいですわよぉ。十三人分…慈悲の心で、頑張って受け止めてやってくださいな」  それを聞き、舌なめずりしながら、話に加わって来るバードルド。 「へへへ。俺も混ぜてくださいよ」 「じゃあ、スゴいのが十三人と、お粗末なのが一人」  ビーダに“お粗末”と言われて、バードルドは顔をしかめる。そんなやり取りを無視し、ラクシャスが冷淡な口調でノアに催促した。 「さぁ早く。裸になって、そこの首輪を付けて下さい」  その声に、思考停止状態のままのノアは、床の首輪に釘付けになっていた顔を、のろのろと上げてラクシャスに視線を移す。ラクシャスは口調は冷淡でも、瞳は薄暗がりの中でもギラギラと、征服欲に満ちた光で異様に輝いて見えた。それがまたノアに怯懦の感情を与える。 「い…いや………」  ノアは、自分でも信じられないほど弱々しい声で、(かぶり)を振った。それが今の自分に―――怯えきった自分にできる、唯一の行動だったからだ。しかしそれに対するビーダの反応は、ノアの哀願を突き放すものだった。 「はい!?…今、なんと仰いましたでしょうかァ、姫様!!??」  片方の耳に手を添え、わざとらしく大声で訊き返すビーダのいやらしさ。 「今、“いや”と仰ったように聞こえましたが…あらあらァ? そこのメイアちゃんや、ソニアちゃんがこれまでにして来た事を、姫様はやっぱり本心では、汚らしいと思ってらっしゃたのかしら!?」 「ちっ…(ちが)―――」 「いいえ。違わないでしょおーーー!!!!」  声を被せてノアの言葉を遮り、発言を封じたビーダは、不意に胸を逸らしてノアを軽蔑の眼差しで見下ろした。そして道化師的な態度の裏に潜む、残忍な本性を覗かせて、ノアの意思を全否定する。 「愛するひとのためなら、見捨てられてもいい?…死んでもいい? はん。そんなもの自分を、恋人のために遂げた非業の死で着飾るための綺麗事よ。世の中には死ぬよりつらい事があるの。それをあんたの侍女や友達は耐え忍んで来たの。その現実を突き付けられて、自分だけは“いや”ですって? ざけるんじゃないわ! 早く素っ裸になって、その犬の首輪を―――」 「もうやめて!」  ビーダの言葉を遮ったそれは、ソニアの叫び声だった。 「お願い! ノアを許して!! ノアはあたしとは違う! あたしのようになっちゃ、いけない人なのよ!!」 「薄汚れた売女(ばいた)に、出る幕はないんだよ!!」  侮辱的な罵声を浴びせるビーダ。銃を突きつけていたルギャレが、ソニアの肩を引っ掴んでやめさせようとするが、ソニアは引き下がらない。 「どうしてこんな酷い事するの!? ノアが何をしたっていうの!!??」  
/1292ページ

最初のコメントを投稿しよう!