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本名の「あいり」も、ひらがなの可愛い名前で自分には似つかわしくない。でも、橋岡くんが呼んでくれる「ありちゃん」は昔からだからか、心地良いのだけど。
「プレゼントって言われてもなぁ。私たち、ただの読書仲間じゃない。こういうことされる立場でもないよ」
月に一度に読書会をするだけの幼馴染だ。高校からは通う学校も別だし、今まで特別なプレゼントをもらったこともない。「誕生日だからお菓子買ってあげる」とか、その程度だ。
「開けていい?」
私がリボンに手をかけようとすると、橋岡くんは慌てて止めた。
「ダメです。中に何が入っているか当てたら、見ていいよ」
「はぁ? 何それ。わからなかったら、開けちゃダメなの?」
「うん、恥ずかしいから」
カフェラテの上に乗る生クリームとチョコレートソースを細長いスプーンですくいながら、いたずらを仕掛けた子供のような顔をしていた。
ホットサンドはもう食べ終えていて、包み紙はくしゃくしゃに丸くなっていた。
「じゃあ一生開けられないよ」
「いや、もう少し考えて」
情けない声で橋岡くんは言うけれど、詰めや設定が甘いのではないかとすこーし、イライラしてきた。
「ヒントくらいちょうだい」
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