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帰宅して、私は箱を自室のテーブルの上に置いた。じっと見ても、透視能力が生まれるわけでもない。何も代わり映えはしない。
小学生までは、お互いの家で読書会をしていた。読書会と言えないような、二人が同じ空間にいるのに会話をせずただ本を読んでいるだけの時間だ。
学校が別になった高校生になってから、なんとなく、男女が密室空間にいるなんて不健全では、と思うようになってきた。
恋人じゃないんだから。橋岡くんに彼女ができたら気まずいし。私には……できる気がしないけれど。
読書会は月に一回。
家が近いから頻繁に会えばいいのだが、お互いの生活に支障が出ないとなると、このくらいがちょうどいいのだろう。
本は、一人で没頭できるから好き。でも、そこに他人が介入するのもまたいいものだ。
その会に、水色の箱という異物が投げ込まれた。
まるでずっと一緒にいたかのように、箱は私の部屋で鎮座している。開けてはいけないと言われると、めちゃくちゃ開けたくなる。
とりあえず、振る。
もそもそとした、紙や布のようなものがわずかに動く音がするが、それだけ。カフェで知った以上の情報は何もない。
ヒントは読書会と、橋岡くんが好きだけど嫌いな事。
……私の眉間に力がこもる。食べ物か、本か。その二択だろう。しかし、それ以上の決め手はないし壁にぶち当たった気分だ。
私は箱の前で腕を組み、しばし考える。
読書会に関係するなら、本だよね。でも本にしては軽い。紙が数枚しか入っていないような。
そこで、橋岡くんの嫌いな事を思い出す。
まさかと思いつつ、そう思ったらそれ以外ないと確信してしまう。
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