20人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「あ…ねぇ、そこ、気をつけてくださいね? 先輩」
隣で写真を撮っていた彼女が、ファインダーから顔を上げると、不意にそう声をかけてくる。そんな彼女に、俺はにっと笑うと一言。
「だいじょーぶだいじょーぶ! これっ位行けなきゃ、未来のエースカメラマンにはなれないぜ!」
そう言って、親指を立てると、俺は隣の彼女の頭をわしゃわしゃ撫でる。しかし、彼女はそれでも不安そうな表情のままだった。けど、まぁ、それも仕方ないだろう。今回は、報道カメラマンである俺と彼女にとって初めての大きな仕事なのだから。
【S公園にあるビルの前でイチャつくカップルのフリをして、現在雲隠れをしている汚職疑惑のある政治家の家族をマークしてこい】
編集長からそう言われた時は、何度自分の耳を疑ったことか。地べたを這いずり回って、泥水を啜る様な生活を送ることはや5年。それでもーー。
(やっと俺にも運が回ってきやがった!)
この仕事で重要なのは、政治家の家族をマークすることじゃない。本当に大切なのは
『いつ家族が政治家と接触するか』なのだ。そして、それを見極め、追跡し、雲隠れをしている最中の政治家の姿を激写する。
最初のコメントを投稿しよう!