水に流す

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 ドアを開けて、今日も歩いて高校へと向かう。強烈な太陽光が私を出迎えてくれる。子供の頃に描いた絵のように、私の周りにあるものはみんな笑顔で私だけを迎えてくれる。そんな手厚い歓迎に日傘をさして、高校までの通学路を歩き始める。  雀のさえずりが聞こえるけど、私の噂話かしら。なんてメルヘンな気分になりながら登校していると、次々に自転車組が私を追い越して行った。あんなのに乗っていたら汗をかいてしまうじゃない。今は夏休み前のテスト週間。こうやって日傘をさしてゆっくり登校すればいいのに。ドンマイとしか言いようがない。  とろけそうなアスファルトの上を、私の綺麗なローファーが優雅に滑るように進んでいく。眩しい太陽に照らされている校門をくぐろうとしたその時、後ろから何者かに肩をポンと叩かれた。ビクッとしてしまったが、どうせ私のファンだろうと一瞬で判断し、振り向いてみた。  なんだ、この人。     
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