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確かに美しい光景です、冬の空ならではないでしょうか。昼と夜のせめぎあいは、とても透明感があるように見えました。
「じゃあな」
都築さまがつばをちょこんとつまんでご挨拶をなさいます。
「お気をつけて」
私は笑顔でお見送りました。
都築さまがはす向かいのスーパーに入って行くのを見てから、店内に戻りました。
*
それから数日後、スーパーで買い物をしていると、奥様方の立ち話が聞こえてきました。
「ねえ、聞いた? 都築さんの事」
「聞いたわよぉ、怖いわね」
都築さん?
「死後一週間だろうって。身寄りがないって怖いわね、死んでもすぐに発見もしてもらえないなんて」
──一週間。私の店に来てくれた頃と重なります……死後……!?
「お通夜は明日って聞いたけど」
「そうだって。一緒に行きましょ」
嫌な予感に、私は慌てて会計を済ませると、店に戻りました。
以前ジャケットをお作りした時の伝票が残っています。古いものなので奥底ですが──ありました、不躾ながら、そちらにあった電話番号に発信させていただきます。
2コールで切れました。
『はい、都築です』
都築さまよりも若い男性の声です、息子さんでしょうか。
「あの、仕立屋の藤宮と申します、信三さまは……!」
『──ああ』
溜息交じりに返事がありました。
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