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アスティリアーナは身支度を終え、運んでもらった朝食を取ってから、部屋を出た。
マーサがリギルの部屋に行って、彼を呼んで来る。
廊下に出て来たリギルは、アスティリアーナの姿を見て、目をすがめていた。
「リギル、どうしたの?」
「……いや。そうしていると、本当にお姫様だったんだなって思って……」
何気ない呟きに、頬が熱くなる。さぞかし、赤い顔になっていることだろう。
今、アスティリアーナはサイラス卿から提供されたドレスを着ていた。深い青のドレスは、アスティリアーナの髪の色にも、目の色にもよく合った。
マーサの手によって、薄化粧も施されている。
これだけ着飾った姿をリギルに見せたのは初めてだから、驚いたのだろう。
「久々に着たから、変な感じだわ」
大きく開いた胸元には、星姫しか持たないペンダントが輝いている。それにそっと手をやり、握り締める。不安を、抑えるかのように。
マーサにじろりと睨まれ、リギルはつっかえながら「に、似合って……る」と言ってくれた。
言わされている感がなきにしもあらずだったが、純粋に嬉しかったのでアスティリアーナは微笑んで、ドレスの裾をつまんで一礼した。
「ありがとう。光栄よ」
「…………」
リギルの顔が少し赤くなり、ぶっきらぼうに「ほら、サイラス卿のところ行くぞ」と告げて、先に進んでいってしまった。
アスティリアーナは、ふふっと笑って、彼の背を追いかけた。
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