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「私は今、星姫でもなんでもない、ただの娘。帝国の後ろ盾もなく、むしろ反乱軍や他の貴族に見つかれば処刑されてしまうでしょう。……私を娶ることは、災いをもたらすかもしれない――」
自分で言って、アスティリアーナは深く傷ついた。祝福そのもの、と呼ばれた星姫が今や災いなのだ。
「姫君――おかわいそうに。そんなことを言わないでください。国を失っても、あなたは高潔だ。私のような者があなたほどのひとを娶れること、光栄に思いこそすれ、なぜ後悔できましょうか」
マルクはひざまずき、押しいただくようにしてアスティリアーナの手を取り、口づけた。冷たい彼の唇に心臓は跳ねなかった。彼の動作はあくまで、巫女姫を敬うものだと感じられたせいかもしれない。
「ありがとうございます……。どうか、よろしくお願いします」
アスティリアーナが微笑むと、彼は立ち上がり、こちらこそと破顔した。
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