第六話 敬虔な次男

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 アスティリアーナは涙を拭って、去ってしまった。  リギルは力なくベッドに腰を下ろして、しばらくそのままじっとしていた。 (……これでいいんだよな)  あとは、マルクが本当にアスティリアーナに対して誠実なのかどうかを見極めてから、去ればいい。  ため息をついて、今は着けていない腕輪を思い出す。彫られた鷹の紋章は、リギルの誇りだった。先陣を斬って、敵を屠って。  反乱側が優勢になったと知った時、ぞくぞくするほど嬉しかった。勝利に酔った。  だのに、今はこんなに空しい。  立ち上がらなければよかった、とは思わない。しかし苦い思いを、一生抱いていかなければならないのだろう。  リギルは寝転がって、天井を仰いだ。  マルクは帝国を恨んでいると言っていたが、リギルはそれがなぜかは知らなかった。仲間の誰かなら、聞いていたのだろうか。  とはいえ元仲間と連絡は取れないし、本人に尋ねるのは論外だ。  マーサに伝えて聞いてもらうのも、有りと言えば有りだが……。  仮にもアスティリアーナに仕えるマーサに、マルクは自分が帝国を恨んでいたことを言うだろうか? ――言うまい。 「こういう時は、情報屋だな」  ひとりごちて、身を起こして窓の外を見やる。日はまだ暮れていない。  城下町なら、必ずいるだろう。  買い物して来るとでも言って、城下町に行ってみようと決めてリギルはベッドから下りた。
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