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ドレスを着たアスティリアーナは、マーサを伴い、侍女の案内に従って食堂に向かった。
「アスティリアーナ姫。これは美しい」
サイラス卿が歩み寄り、褒めてくれる。
微笑むと、既に着席していたマルクも立ち上がって、「私の見立てでしたが、予想通り似合いますね」と一言口にして、父に続いてアスティリアーナに近づく。
手を取られて口づけられて、アスティリアーナは「ありがとうございます」と礼を口にした。
「とても素敵なドレス。見た時から、着るのが楽しみでした」
「それは何より。さあ座って!」
マルクは手を引いて、アスティリアーナの席まで導いてくれた。椅子を引いてくれたので、アスティリアーナは遠慮なく座る。すると、斜め前に座っていたディオンが皮肉気に笑った。
当然のごとく、彼は立ち上がらなかった。それが暗に、彼のアスティリアーナへの態度を示している。
次男と結婚しようが、敬う気はないということだろう。
サイラス卿とマルクは何も言わず、それぞれの席に着いていた。彼らは長男を咎める気はないらしい。
アスティリアーナ自身はともかく、マーサが怒りそうで彼女を見やったが、マーサは大人しくアスティリアーナの隣に座っていた。
ホッとして、アスティリアーナは食事に向き直った。
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