第七話 隠した教え

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 食事は楽しかった。サイラス卿は陽気に喋っていたし、マルクも気を利かせて何度もアスティリアーナに話を振ってくれた。ディオンだけはあまり喋らなかったが、アスティリアーナは気にしないことにした。  彼が領主になった後が心配だが、マルクと結婚すれば離れた城に暮らすことになるのだし、問題ないだろう。  部屋に戻って寝支度をした後、アスティリアーナはリギルはまだ戻っていないのだろうかと心配になった。  マーサは疲れたと言って、湯浴みをしてすぐに眠っていた。  アスティリアーナは髪をくしけずりながら、心を決めた。 (見にいくだけ)  櫛を置いて、アスティリアーナは寝間着にマントを羽織った。リギルの部屋は近いから、この格好でも大丈夫だろうと判断した。  扉を開けて、廊下に出る。松明が灯されているとはいえ、城の廊下は薄暗い。  アスティリアーナは、心持ち速足で歩いていった。  ふと話し声に気づいて、壁に身を寄せる。話し声と、足音は近づいて来る。ちょうど柱の影があったので、そこに隠れることにした。  別に、隠れる必要はないのだが。こんな格好で廊下に出ていることを(とが)められるかもしれないと思うと、(わずら)わしかった。 「……それで、どうなんだ」 「兄さん。ここは彼女の部屋に近いのです。話は、あとで」 「ああ、そうだったな」  ディオンとマルクが肩を並べて、歩いてきたのだった。  アスティリアーナは息を殺して、彼らを見送る。 (彼女の部屋って……。私の話をしようとしているの?)  逡巡(しゅんじゅん)した挙句、アスティリアーナは足音をさせぬようにゆっくり歩いて、彼らの後を追った。  しばらくして、彼らはとある部屋に入った。アスティリアーナはそっと扉に近づいて、聞き耳を立てる。  心臓がどきどきしすぎていて、心音が聞こえてしまわないが不安なほどだった。もちろん、聞こえるわけがないとは、頭ではわかっているのだけれども。 「お前は、帝国を憎んで反乱軍に力まで貸していただろう」  ディオンの言葉に、アスティリアーナは凍りつく。
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