昼下がりの発見

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トイレに駆け込む寸前の私にステンドグラス光越しの君が喋りかけてきた。しかし逆光で、姿がよく見えず、男か女かも、若者か老人なのかも分からない。身長から想像しようにも、ちょうど男でも、女でも、若者でも、老人でもおかしくないくらいの背丈であるから全く分からない。しかも話す声は小さく声からも想像がつかない。ボソボソと井戸端会議をする中年アリのような声量である。少し近づくとかろうじて声が聞こえてきた。 「猫はにゃーと泣くけれど、ココアはそう泣かない。なぜ猫はにゃ~となくことができるのだ、ココアの鳴き声はきっとココーア、ココーアと泣くでしょう。だから私もココーアと泣いてみよう。なんで泣くのかって?昨日、天気予報を見忘れ、取り込み忘れた洗濯物が雨に濡れて洗濯し直しのなったからさ」 と。たしかに昨日は雨であった。しかし天気予報ではたしかに前の日から雨が降ると言っていた。このステンドグラスココア野郎(女かもしれないが)は天気予報を見忘れ、さらに取り込み忘れるとは。そういう私も実は洗濯物を取り込み忘れた勢の一人だ。天気予報は見ていたが、すっかり取り込みを忘れていたのだ。私はステンドグラスココア女(男かもしれないが)に言った。 「私は天気予報を見ていた、しかし洗濯物はずぶ濡れだ、だから私も泣こう、ココーア、ココーア」と。 そういうとステンドグラスココア少年(老人かもしれないが)は返した。 「はっはっはっ、天気予報を見ながらにして、取り込み忘れるとは愚かなやつだ、ココーア、ココーア」 私はそう言われると思わず、ゼリーを買おうと思ったらヨーグルトだったときくらい驚いた。私は切り返した。 「天気予報自体見忘れるとは愚かなやつだ、私は少なくとも、天気予報をみるという行為はしていた、ココーア、ココーア」と。 そのやり取りが2時間ほど続いた時だろうか。私の後ろでココアを飲んでいる猫がいた。ふと、その猫が、恐らくトイレに立ったとき、一人ぼっちになった、ココアは呟いた。 「五十歩百歩、五十歩百歩」 私とステンドグラスココア老人(少年かもしれないが)はココアの鳴き声が「ココーア」ではないことを発見した。
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