空色のキャンバス

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空色のキャンバス

「ふぅ。」と深呼吸をした。白いスケッチブックではなく、絵の具で塗られたキャンバスに。 灯里がイギリスに旅立ってから一週間。ついにコンクールに出品する作品が完成した。一人の少女が、オレンジ色のワンピースと、栗色のポニーテールを風になびかせて、笑みを浮かべている。 灯里の要望により、青い空の下で。 「私を描いてくれるなら、絶対背景は空がいいの。 ほら、私の絵の美絵だって、背景は空でしょ。離れていても空の下で繋がってるって感じで、素敵じゃない?」そんな、ありがちで恥ずかしい言葉を、自慢げに、腰に手を当てて言う灯里が、なんだかおかしくて、ひさびさに爆笑というものをしてしまった。灯里はプンプン怒っていたが、次第に一緒になって笑っていた。 思い出すと、なんだか心がくすぐったくなって、フッと吹き出してしまった。そして、灯里と繋がっているという空が見たくなった。 美術室の窓を大きく開けた。身を乗り出して見上げた空は、今日も御空色で、端がオレンジ色に染まった雲を浮かべていた。その雲の上で、小さな灯里が笑っている姿を想像すると、世界がちょっぴり鮮やかに見えた。
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