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 あの絢爛豪華なシャンデリアが煩わしい。特権階級者の嫌味、それ以外のなにものでもないと、彼女はここへ来るたびに不必要なほどに高い天井をふと見上げては飽きもせず思う。  彼女が生まれるよりもずっと前に、この洋館はここにあった。にもかかわらず、ここには清潔な者はおおかた来ないというのに、浮浪者や犯罪者すらも気兼ねなく出入りする施設だというのに、外とは別世界の、まるで花園のような柔らかな絨毯のだだっぴろい床一面どこを隈なく探しても汚れはおろか染み一つ残しておかないというのは、いかにこの場所に金が溢れているかを誇らしげに宣伝しているようなものだ。  高級ホテルのような内装でありながら、ギルドの体裁はさながら銀行のようだ。奥にあるのは壁の端から端へと横一直線に繋がる受付窓口。まともに数えるだなんてバカはしたことないが、ざっと見ただけでも20はある。けれどもそのどれもが四六時中埋まっている。  特に、今日に限ってはどうしてこうも。
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