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――ドン!
騒がしい人々の声をかいくぐって響かせるほどに、男が強くカウンターを叩いた。
「だからもっと金になるハントはねぇのかってきいてるんだ!」
酒に巻かれた臭気を全身から発する髭面の小太りな男が、アクリル板の向こうにいる受付の職員に罵声を浴びせていた。おそらく長時間こういう状況なのだろう。帽子を目深に被った職員の顔はうかがえなかったが、だとしてもすっかり困り果てていた。
「俺はcode;drunkだぞ! ランクCだぞ! こんなザルランクじゃ話になん――あぁ?」
ふと、なにかに気付いたdrunkが振り返ったと同時に、「ぬおっ!?」後ろ襟をつかまれて席から放り出された。
替わってその席には、赤い髪の女がどかりと腰をおろして悠然と足を組んだ。
「てめぇ!」
灼けた顔をさら赤くしたdrunkは彼女につかみかかろうとした。しかし彼女は手を振り上げる、その動作で肩上にある長身リボルバーの銃口を男の鼻先につきつけて、撃鉄を引き、引金に絡めた指で威嚇した。
「うっ……!」
「私にギルドでハントをさせる気か?」彼女は振り返りもせずに冷めた声で言った。「それならそれで、私は構わないが」
するとdrunkは目を見開いて驚いた。
「赤い髪の……! て、てめぇは!?」
drunkは慌てて後ろに飛び退いた。しかしまだこdrunkの怒りは煮え滾ったまま、牙を剥きだした獣であった――彼女たちを視界に収めるまでは。
「クソッ!」drunkはうろたえた。「おぼえてやがれ!」と吐き捨てて人混みを押し退けながら逃げていった。
彼女は呆れ混じりの感情を息で吐く。銃身の長い骨董品を腰のガンホルダーに収めた。
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