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「恐れ入りますが、先週のcode;chaserランクCの案件でございましたら、既に報酬は支払済みです」
デュティの眉間はたちまちに皺を寄せ集める。
「はあ? ちょっと待て! 支払われたって、なにも貰っていないぞ!」
「一昨日にDUSTのオーナー様が起こしになり、報酬の1万ミラ全額、お支払い致しました。受領書にもサイン頂いております」
「なんだと!? またか!」
激怒するデュティの後ろでウルカとシャンは笑っていた。
「アハハハ、トラッシュくんに先越されちゃったねっ!」
「……あいつ……! 今度という今度は息の根を止めてやる!!!」
「ほらほらほら、まぁまぁまぁ」
「今に始まったことじゃないわ。落ち着きなさい」
と、シャンはにやついた口を隠しながらデュティをなだめた。
「お前たちはそれでいいのか!? 毎回! 毎回!!」
「だってぇ~、アタシぃ~、トラッシュくんにはいっぱいごほーび貰ってるしぃ~」
「私もトラッシュにはいつもたくさん支援してもらってるわ。不自由はしてないもの」
「トラッシュ、ティナにケーキ買ってくれた」
デュティは咄嗟に腰のホルダーから銃を抜き、さも当然の動作で撃鉄まで引いていた。
ウルカとシャンは頭に血がのぼると見境がなくなるデュティを急いで押さえ付けた。
職員の男は、表情はうかがえなかったが口元を引きつらせていた。
「はーなーせー!!!」
「ダメだよ、こんなトコでそんなモンだしちゃぁ」とウルカはデュティに引金を引かせまいとトリガーガードごと両手で覆う。
シャンはデュティを椅子から立ち上がらせまいと、彼女の両肩を押さえつけている。
「ギルドで騒ぎなんか起こしたら街中のcodeが一斉に襲いかかってくるわよ」
「うるさい! その手を離さないならお前らも敵か! トラッシュか! トラッシュなんだな!」
「なにわけのわからないこと言ってるの」とシャンは嘆息をつく。
「こうなりゃもう最終奥義! ティナ! デュティにイイコイイコされなさい! それでデュティの気が治まるはずっ!」
そんなことにまったく興味を示さないティナは、いつのまにか受付から提示されていたリストを指さした。
「……ランクA」
ティナのその一言に、三人はぴたりと動きを止めた。
片手が通るだけの狭い口から差し出された紙一面には、事細かに文字が記載され、その上からAの印が押されていた。
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