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今年も寒い冬が来た。
だが僕は寒さを感じなかった。暖かいマフラーをして、暖かい手袋をしてなおかつダウンジャケットを着ているせいかもしれないがそれよりも僕の心が熱く燃えていた。そんな僕はいつも通り寂れた公園へと足を向ける。
今年も「彼女」に会えるかもしれない。
そんな期待を胸に。
古い桜、それももう寿命の尽きかけの大きな大きな古い木の幹付近。そこには冬になるといつも「彼女」が立っていた。
ボブカットで色白、尚且つメガネの似合う大人しそうな女の子。彼女はいつもカメラを片手にその幹のところに立っていた。
今年も例に漏れず立っていた。
「こんにちは! 今年も、会えましたね」
僕は迷わず声をかける。
僕の声に彼女は僕の方へ視線を向け、目を丸くした。
「あら、本当ですね。今年も来てくださったんですね!」
パッと花が咲く様に笑う彼女の笑顔。
名前も住んでるところも知らないけど僕はいつの間にか彼女の虜だった。
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