オンディーヌウイルス

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オンディーヌウイルス

 この薬も残り1錠しかなくなってしまった。  最後の1錠を銀色のシートから指で押し出し手のひらに乗せる。それをつまんで口に入れたら、ペットボトルの水で流し込んだ。1日1回、1回1錠飲まなければいけない。飲まなければ24時間で死ぬ。つまり、この薬の残りは、自分の余命と同じである。  振り返ると、1ヶ月前だ。 親父が久しぶりに会社から家に帰ってきた。仕事詰めの親父は、土曜日の夜や日曜日の朝に帰ってきて、一週間分の服を洗濯し乾燥機にかけ乾かす。その間、俺と一緒にご飯を食べに出かける。そして、乾いた服を車につめ会社に戻って行く。これが親父のルーチンだった。この時もいつもと同じだと思っていた。 違和感に気づいたのは、帰宅時にあまりに大きな足音で歩いているのに気づいた時だった。目覚まし時計を見てみると、まだ朝の5時で、俺だって日曜日くらいはゆっくり寝ていたい。そう思って頭まで布団をかぶってなんとか寝ようとしていると、バタンと大きな音とともに俺の部屋のドアが開き、思いっきり布団が剥がされた。体を温めていた布団の温もりがなくなり急に体が冷えこむ。 「来い」     
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