オンディーヌウイルス

　最後のニュースの見出しは「世界が終焉へ」だった。

　シェルターから出られない俺は親父に毎日メールをしている。設置されていたノートPCに何かしらこの現状を変えるヒントがないかと思い、あらゆるフォルダ、あらゆるファイルを開いた。もしかしてと思いメールソフトを立ち上げてみると一つのメールアドレスが入っていた。それはフリーのメールアドレスで、初期設定と思われる英語と数字が適当に並んだ意味のないもので、親父宛のものかは不確かであったが、わざわざこんな事をするのは親父しかいないと信じてメールを送っていた。内容は、ネットで確認できる市街カメラに映った街の様子や、生存者間でのSNSやメーリングリストでのやりとりのまとめ、それに加えて、俺の苛立ちや不安、やるせない気持ちなど、時として親父との思い出話も少しだけ足している。しかし、俺が送ったメールに返事は一度もなかった。送信はできていたのでメールアドレスは間違っていないはずだし、開封確認機能を使って開封を確認