オンディーヌウイルス

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すると、ちゃんと開封されている。つまり、読まれているはずではある。返事の来ないメールなど無駄なことかもしれないが、絶対に意味があると思って続けてきた。それも今日で終わりだ。死ぬならシェルターの中ではなく、外の世界にでたい。俺は備え付けられていたリュックに残った水と食料を詰め込む。最後にPCの前に座りメールソフトを立ち上げる。 「親父へ、これが最後のメールだ。俺は外に出ようと思う。死ぬのはわかっているの。だけど、シェルターの中で死ぬのはごめんだ。どこに行くかは決めていない。だが、外に出ようと思う。もし生きていたらどんな返事でもいいからよこしてくれ。隼人」  一時間だけ待って何も返事がなければ外に出ようと思った。しかし、メールを送信したとほぼ同時にピロン、と音が鳴り、メールが届いた。 「毒島が向かう。一緒に来い」  親父からなのか?この一文だけでは親父とは確定できない。しかし、このような無駄を一切排除したこの文章に親父の面影を感じる。親父は生きている。そう信じたい。絶望の中に一筋の光を感じた、その時だった。 ドスンドスン・・・  大きな音が天井から聞こえる。地震もないのに音がするということは、外に人がいるということか。天井はシェルターの入り口で、鉄製のハッチになっている。潜水艦をイメージして作られた密閉構造で、外側からは鍵がないと開かない仕組みになっている。  俺はハッチに近づき耳を天井にあて外の音に耳を澄ます。やはり、ドンドンという叩く音に加えて、時折ガサゴソと音がする。 「おーい、聞こえるか? 開けてくれ!」     
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