オンディーヌウイルス

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 人の声が聞こえた。親父か? いや、親父の声とは違う気がする。じゃぁ、誰だ? メールで言っていた毒島という人物か?  「おーい、隼人くん、いるんだろう?」  俺の名前を知っている? どうする? このままドアを開けずにいるのか? それとも、開けて確認するか? 「おーい」  もし、ドアの向こうは俺を殺そうとしている人間だったら? いや、俺を殺そうとする理由なんてない。それに俺の名前を知っているという事はやはり親父の言っていた毒島という男なのだろうか。 「おーい、いたら返事してくれ。俺は毒島っていう、君のお父さんの元同僚だ」  毒島? 親父がメールで言っていた人だ。 「今、開けます!」  ハッチのノブは円形のハンドルになっていて、力を込めて握り思い切り回す。ギリギリと鈍い金属が擦れる音がしたあと、重いドアがゆっくりと上に押し開けた。隙間から男の体が見えると、それに驚きドアから離れて部屋の隅で牽制するように身構える。 「隼人くんだね」  ドアの隙間から男が顔をだす。見たこともない髭面の男だ。 「お父さんから頼まれて来た」  男は砂埃のついたブーツと作業着姿でゆっくりと梯子をつたい、シェルターに降りてくる。体型は熊のようで少し威圧感を感じる。しかし、なぜか痛めているのか左手は三角筋でつられていた。     
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