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「ほぉ、すげえ設備のシェルターだ。ここならストレスなく過ごせるな」
毒島はあたりを一瞥した。
「悪いが水をくれないか?」
「水…」
水の残りはあと500ミリリットル入りのペットボトル4本。できることなら全て自分の分として4本とも残しておきたかったが、1本くらいならリュックも軽くなるし、くれてやってもいいだろう。リュックから一本を取り出し放り投げると、三角筋のついていない右手でパシンと受け取り、ペットボトルの蓋を器用に口と右手で開けてぐびぐびと飲んだ。
「うめぇ。生き返るぜ」
半分ほど飲んだところで、ペットボトルを机の上に置いた。
「俺の名前は毒島康介だ。よろしく」
毒島はゆっくりと俺に近づき、三角筋に吊るされた手とは逆の右手を差し出して握手を求めてきた。
俺は握手に躊躇した。本当にこの男を信用して良いのか? 親父のところへ行く目的は何だ? どうして怪我をしている? ほとんどの人間が死亡した世界でどうしてこの男は生きのびている? わからない事が多すぎる。
「ふふ、まだ信用できないってか。まぁ、良い。しかし、残された時間は少ない。今から車でつくばまで行く。一緒に来い」
「……」
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