第一章ってか、章立てという概念がない

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30代くらいの店員が運んできたコスタリカコーヒーを飲んでいる君の後ろで、猫が一人、キリマンジャロコーヒーを飲んでいた。僕と君は机を挟んで、正対しているので、君からは勿論、猫は見えない。猫は30代くらいの店員が運んできたであろう、コーヒーの香りをずっと嗅いでいる。この店に入って来たときからそうなのだ。 「にゃーにゃー」 という猫の言葉がキリマンジャロコーヒーとコスタリカコーヒーの香りを通して、翻訳されて聞こえてくる。 「いやー、キリマンジャロの酸味と香りは最高です。いや本当に。マタタビトッピングもいいでしょう。猫じゃらしを角砂糖代わりに添えても良い」 猫は敬語であった。いやに、礼儀正しい。猫が礼儀正しいのか、コーヒーたちがそう翻訳しているのかは知らないが。 君が何か、僕に喋りかける。 「最近、下着泥棒がこの辺りで出るらしいわ」 などと言っているようだ。 「猫を想像してごらんよ、猫は下着を履いてない」 僕はそのように返した。すると君は初めてパクチーを食べた人間のような顔をした。 「下着を履くなっていうの、どうかしてるわ」 君の後ろの猫を見ると 「にゃにゃにゃにゃにゃ」 と笑っている香りが私の鼻に伝わる。 「ちょっとお手洗いに行ってくるわ」 そう言い、君はソファから立ち上がった。良く見ると、君のスカートからは猫の尻尾が出ていた。君は、私は猫なのか、人間なのか、それはどうだっていい。猫を猫と認識するから、猫になり、人間を人間と認識するから人間になる。あとは、君の尻尾でモフモフして、遊ぶ。それだけで十分だ。
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