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実際に催眠状態になってみると、なぜか事故を起こした時のことではなく、小学生4年生になっていろんな夢を見ていた。
僕は見た内容をそのまま伝えた。
「事故のことを思い出さなくてすみません」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「あ、そうだ。今、一つ思い出しました。僕、その日いくつかの機能を停止させたんですよ。あ、削除させたんですよね」
検査担当者の顔つきが、ほんの少しだけ変化したのが見てとれた。
多分、こういうことが必要な情報なのかもしれない。
「どんな機能のものだったかが覚えていますか?」
「確かアロマが出てくる機能とか癒しの音楽が流れる機能とかそんなものだった気がします。別に必要ないかなと思いまして」
「……。そうですか。あと、すみません、一つよろしいでしょうか?」
何を聞かれるのかと思ってドキリとする。
こういう質疑応答は緊張するし、気持ちよいものではない。
「あなたは、夢で出てきたように昔から秋が嫌いでしたか?」
事件を起こしたのは、10月25日。あれから1年以上経つ。
確かに、子どもの頃より、事故前より、今の方が苦手だ。
事故に遭った時のことを思い出すからかもしれない。
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