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アルフレドの握る大剣は既に血塗れである。その血の持ち主のほとんどは敵対する魔女の僕たちのものではあるが、己の手や腕から流れる血も混ざっているだろう。この大剣を手にしたときに見た輝き―夕焼けに照らされた時の美しさ―などもはや感じられない。
対する魔女は未だ余裕すら見せている。妖艶な笑みを唇にうかべ、アルフレド一行を玉座から見下ろしている。戦士が魔女めがけて疾走する。その手には斧。二メートルはあろう彼の巨体から繰り出される斧の一撃は強烈で、これまでも頑丈な装甲を持つ敵どもを一撃で撃砕してきた。
僧侶が防御呪文を唱える。戦士の周りに結界が張られる。並みの呪術であれば全て反射してしまう強力なものであるが、比類なき魔力を持つ魔女相手には心もとない。アルフレドは血塗れの大剣を持ち戦士のもとへ走る。アルフレドの大剣は聖者の加護を受けた聖剣であり、呪術をはねかえす特性を持つ。強靭な肉体を持つが呪術はめっぽう弱い戦士の助けになればと思う。
弓兵が叫び声をあげる。気をつけろ、何か来るぞと。魔女の口元が動いている。アルフレドは戦士に退けと言った。僕は呪術に耐性がある、しかし君は危ないと。戦士は頷いた。だが、遅かった。魔女の手元から放たれた光線は戦士を薙ぎ払い、消し炭にした。怒りの叫び声をあげながら格闘家が魔女に迫る。ダメだ、冷静になれと弓兵が制止する。魔女は再び光線を放とうとする。このままでは態勢が狂う。アルフレドは魔女と格闘家の間に立った。そこに光線が炸裂するも、聖剣が呪術を緩和してくれたようだ。アルフレドも格闘家も手傷は負っているものの、命はある。僧侶の呪文が二人を包む。傷が癒されていく。
アルフレドは格闘家を下がらせた。おそらく、魔女の呪文に耐えられるのは己のみであろう。前線に出るのは自分で、君たちは下がってくれ、サポートだけ頼むと叫んだ。格闘家は悔しそうな顔をしたが頷いた。
アルフレドは大剣を構え、魔女を睨みつける。魔女は玉座から立った。今までの余裕の笑みも既にない。この大剣が何なのか、この目の前の少年といってもいいような年頃の男が何者なのか理解したのだろう。
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