64話 氷海の世界 ~ それでも『欲望の種』は凍らない ~

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 「コツ…コツ…コツ…コツ…コツ…」 冷え切った王宮の通路に靴音がこだまする。  「どうぞ、こちらへ…ラグナル・デ・リンデンス皇帝がお待ちです…」 靴音をこだまさせる男を『融和の間』に迎え入れた男はラグナル・デ・リンデンス皇帝の右腕と呼ばれる『フレイディス』宰相であった。 そう、ここは、市民から敬意を込めて『氷の王宮』と呼ばれるリンデンス帝国ラビュリント王宮であり、これよりパルム公国の外相マンパシエが『欲望の種』を蒔き(まき)に行く場所である。  「お初にお目にかかります。パルム公国外相の『アレッサンド・ド・マンパシエ・ツー・ロマーノ』でございます…」  「うむ。遠路ごくろう。堅苦しい話は抜きだ。さぁ、ソファにかけられよ…」  マンパシエはリンデンス皇帝の勧めに従い、皇帝の前のソファへ腰をおろす。マンパシエの前には、リンデンス皇帝と側近中の側近である『フレイディス』宰相がソファに腰掛ける。  「マンパシエ卿、貴殿は我が帝国が『アヴニール国家連合』に加盟するよう勧誘しに参られたのか?」  「フレイディス宰相のご考察の通りでございます。是非『アヴニール国家連合』に加盟いただきたい」  
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