(20)

3/22
前へ
/413ページ
次へ
「いきなり……何をっ……。第一、私は二階で何度か淹れた事があるだけで……」 「技は見て盗むもんだ。まさか、何も考えずに働いてたのか?言われた事をやるだけなら誰にだって出来る。別に……お前じゃなくたっていいんだ」  陽は見下すような目で遥を捉えると、嘲笑を口元に浮かべた。 「本気でそんな事を……?」 「ああ……。どうする?自信が無いなら止めてもいいぞ」 「……もし、そのテストに落ちたら……私はどうなるんですか?」 「……そうなった時は……いらない。この店にも、俺の人生にも」 「それって……」 「早くしろ。客を待たせる気か?」  冗談をいってるとは思えない冷酷な瞳に、遥の背中にぞくぞくと冷たいものが走った。  ポットに伸ばす指が、戸惑いに揺れる。  抜き打ちテストの合否等、すでに出ているも同然だった。  
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2090人が本棚に入れています
本棚に追加