2091人が本棚に入れています
本棚に追加
「……それじゃあ。用事はこれだけっ……」
「待って」
目を伏せたまま立ち上がろうとする遥の手を、深影はすかさず掴まえた。
男の力で引き寄せ、彼女の震える体をそっと抱き締める。
「深影っ……」
「ごめん……。困らせるだけだってわかってる。でも、遥の目の前にいると思うだけで自分が抑えられないんだ。本当は……このまま……嫌われてもいい……。遥を僕のものにしたい」
熱が、匂いが、声が……。
胸の締め付けられる思いに、遥は静かに瞼を閉じると、その目から一滴の涙を溢した。
「でも、出来ない……。陽ちゃんは、僕の大事な友達だから」
一気に解放された身体、同時に深影との思い出も消えてゆく様な錯覚……。
遥はほんの僅かの間、自らを抱き締める事で、その甘い余韻に浸った。
最初のコメントを投稿しよう!