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「……それじゃあ。用事はこれだけっ……」 「待って」  目を伏せたまま立ち上がろうとする遥の手を、深影はすかさず掴まえた。  男の力で引き寄せ、彼女の震える体をそっと抱き締める。 「深影っ……」 「ごめん……。困らせるだけだってわかってる。でも、遥の目の前にいると思うだけで自分が抑えられないんだ。本当は……このまま……嫌われてもいい……。遥を僕のものにしたい」  熱が、匂いが、声が……。  胸の締め付けられる思いに、遥は静かに瞼を閉じると、その目から一滴の涙を溢した。 「でも、出来ない……。陽ちゃんは、僕の大事な友達だから」  一気に解放された身体、同時に深影との思い出も消えてゆく様な錯覚……。  遥はほんの僅かの間、自らを抱き締める事で、その甘い余韻に浸った。
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