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「……私のおかげ?」
意味がわからない、と顔を上げた遥と深く頷きを返した深影の視線が、この時初めて交わった。
相変わらず美しいブルーを発色する彼の瞳が、嬉しそうに細められた。
「遥と初めて出会った日、本当は僕も悩んでた。周りは努力に努力を重ねて仕事を勝ち取ろうとしているのに、僕は事務所にやれと言われた事をただ淡々とこなしているだけ。モデルを始めたきっかけだって、やりたい事が見つからなくてなんとなくだったから……。そんな世界でのうのうと生きる僕は、真剣に取り組んでいる人から見たらどう思うんだろう……なんて、考えていたら」
「っ……」
「遥に出会った。月明かりに照らされ、足元を水にさらわれ立つ君は、どう見たって幸せそうなんかじゃ無かった。悲しそうで、寂しそうで……ただただ、綺麗だった」
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