2090人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あのね、遥」
互いに微笑み合い、和やかなムードが流れたのも束の間だった。
途端に表情を堅くした深影が、そっと口を開く。
「僕が日本を発つのは……明日だ」
「えっ……何を言って」
息が止まるかと思った。いつもの様に、冗談だと言って笑って欲しい。そんな、遥の願いも虚しく、突き付けられた現実は非情なまでに残酷だった……。
「二時半の飛行機で行く」
「っ……」
「本当は、一人じゃ心細いんだ。やり遂げられる自信だって無い。情けないけど……それが、本音なんだ」
「その事……レイナさんは、知ってるの……?」
「……言える訳ないよ。僕はいつだってレイの先を歩かなきゃ行けない。兄の格好悪い背中は、見せたくない」
最初のコメントを投稿しよう!