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「こんにちっ……」
「っ……!?」
開店からほんの数分もたたずに店の扉が開いた。この日、第一号の客は近所の配送会社で事務員として働く紗椰だった。
壁と対面していた陽は、動揺に目を見開くと、慌てて手に持っていた掲示物を背中に隠す。
「……いらっしゃい」
「何よ、その驚いた顔は……。それに今、何か隠したでしょ」
「関係無いだろ」
「いいから見せてよ。気になるじゃない」
「おい、やめっ……」
後退りする陽を壁際まで追い込むと、紗椰は素早い動きでA4サイズの用紙を奪い取った。
「従業員募集……って……遥ちゃんは?」
「……今朝、出て行ったよ」
この場合は、追い出した、の方が適切な表現だろうか。
陽は下唇を甘く噛むと、目線を足元に落とした。
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