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「っ……」
生温い夜の風が、ベランダの柵に寄りかかりため息をつく陽の髪を優しく撫でる。
部屋の明かりもつけぬままに眺める、街の景色はやたらとぼやけて見え、一層ネオンは輝かしいものに思えた。
その時、誰もいるはずの無い、真っ暗な隣の部屋。
その窓が、カラカラと静かに開けられた。
右側に感じる人の気配。
陽は、正面を見据えたまま落ち着いた声で問い掛けた。
「……何してんの」
「帰って……来てしまいました」
「今さら……遅い。もう、新しい人雇っちゃったし」
「……だ、誰ですか」
「紗椰。よりを戻すことにしたんだ……俺達」
「えええええっ!?」
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