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夜の街に、遥の絶叫が響き渡った。遠くでは、何処かの犬がレスポンスを返している。
「うる……せえなっ」
「んん、んんーっ!!」
陽の手に口を塞がれた遥は、じたばたと体を捩らせ、何かを賢明に訴えていた。
「ああ、もう何だよ……」
「ぷはっ……!ひ、酷いですよ、陽さんっ……!今朝の今で、そんな……の」
「冗談だ、バカ。そんな簡単に気持ち切り替えられたら……苦労しない」
ふいっと顔を背け、また柵に体を預けた陽の後ろ姿に、遥はほっと胸を撫で下ろす。
「あの、陽さん。本当にすみませんでしっ─」
「何で……帰って来たんだよ」
そよぐ風が、陽の甘い香りを遥の鼻先へと運ぶ。
泣きたくなる気持ちをぐっと堪え、遥も柵に両腕を掛け彼の隣に並んだ。
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