(20)

21/22
前へ
/413ページ
次へ
 次の役作りだろうか、黒い髪を肩の辺りまで切り揃えたレイの後方、深影はやれやれと苦笑いを浮かべた。 「レイナさんはともかく……なんで深影が……!?」  二人の元へ走り寄り、驚きを隠せずにいる遥の頬に、深影の指先が触れた。 「レイがね……教えてくれたんだよ。たった、12時間ごときの移動距離……困難とは言わないんだってさ」 「……12時間ごとき……」 「だから、僕達……遠距離なんかじゃないよ」 「ええっ……」  ブルーの鮮やかな瞳に見詰められ、たじたじになる遥の唇に、深影の親指が添えられた。 「ただいま……遥」 「……ただいま、じゃねえよ……さっさと、出ていけ……。そして二度と帰ってくるな」 「ええっ……それは酷いなぁ、陽ちゃん」  陽は、深影から遥を引き離すと、威嚇する猫のように目尻をつり上げた。  
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2091人が本棚に入れています
本棚に追加