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 リビングを通り抜け、対になって並んだ扉の右側を、深影は躊躇する事なく開くと、先に遥を中へ誘導した。  この場所には何度も訪れているのだろうか、それはまるで自宅を案内するかのよう、実に慣れた振る舞いだった。 「お邪魔しま、す……」  少々戸惑いながらも、敷居を跨いだ遥。全身に春の木漏れ日のよう、暖かな陽射しが降り注いだので、あっ、と小さく驚きの声を漏らした。 「日当たり良好でしょ?」  背後でクスッと小さな笑みを落とした深影が、扉を静かに閉める。 「……うん」  物置になっている、と聞き、足の踏み場も無いほど窮屈な状態を想像していた遥は、いい意味で裏切られた、と内心で思った。
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