アメリカン・スピリット

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「しかも、もうこれ500円玉で買えないからな」 「うっそ、たっかー、高級品かよー。なんでそんなのいまだに買うの?」 「比較的長時間保つからな。コスパよコスパ。コストパフォーマンス」 「そういう意味じゃ…………まあいいや。たしかに長いねー、10分くらい?」 「そう。至福の時間が約2倍。つまり幸せも約2倍」 「そっか……それはよかったねー……。おかげで私の至福の時間は約半分……つまり幸せも約半分……いやもうなんなら90パーセントオフ…………」  彼女の溜息が再び、今度は約2倍の量で宙に舞う。  本当に月まで届いたのかーーそう見紛うほどだった。  どこからか現れた雲が、僕の視界から月を奪った。  隣の彼女は見るからに拗ねて、口を尖らせて俯いた。暗くて確かめられないけれど、おそらく頬を赤く染めながら。  申し訳なさと恥ずかしさ。  僕は、自分勝手な稚拙で灰色の幸せを、火種と一緒に揉み消した。
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