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ガラス越しの地下街の通路は、多くの人が行き来していた。
右に左に人々が。目まぐるしく。
「結局さあ」
「うん」
「二人だね」
「確かに」
「いつもだったけどね」
「いつもね」
「ずっと二人だったよね」
「ずっとつるんで遊んでた。二人で」
「大学でもね」
「違う大学でもね」
レモンサワーが来た。
「二次会に!」
「乾杯っ!」
「女同士に!」
「乾杯っ!」
「イエーイ!」
「はあぁ」
「なによ、そのため息」
「だって、もうすぐアキ行っちゃうじゃん、つまんないよ。遊べないし、メールだけだし、もう帰ってくればいいのに‥‥突然、わたし生き方変えるのって、引っ越しちゃってさ。もう三年だよ。三年も海のそばに住んだら十分でしょ」
「ううん、ずっとこのまま、帰らない」
「バカじゃないの」
「なんでよ」
「バカだよ。あんないい会社も、やめちゃってさ」
「結局、海が好きだってことよ」
「‥‥そんなの昔から知ってるよ、そりゃ、そうかもしれないけどさぁ」
「ねえ、もう一杯だけ飲もうか」
「‥‥もう、なんだか、とぼけてる」
「頼むからね」
「‥‥はいはい。でも、新幹線の時間は大丈夫?」
「うん、もう、ちょっとなら」
レモンサワーを二つ頼んだ。
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