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「送り狼?」
思いついたままに言った。
「ハハハ 酷いな。」
ちらりとマスターを見ると、マスターはニコッと笑みを浮かべて去って行ってしまった。
どうやら危険人物ではないらしい。
「だってそうでしょ?
酔いつぶれる女性を送りたがるのは送り狼って決まってるもの。それとも私は襲うほどの魅力もない?」
そう言って自虐的に笑った。
「襲ってほしいの?」
「まさか。
一人で飲みたいの。放っといて。」
突き放すように言ったつもりなのに、送り狼は引かない。
「俺は放っとけって言う女性を本当に独りにできる程酷い男じゃないんだ。」
またニコッと笑う。
「めんどくさ。
じゃあ黙ってて。」
これ以上話すのも面倒でそう言うと、送り狼は黙って隣で飲んでいた。
私がどんどん飲み進めると、
「ところで、俺が送って行っていいの?」
と聞いてきた。
意外と律儀な送り狼だ。
「勝手にすれば?」
「ありがとう。」
そう言うと、微笑みを浮かべながら住所が書いてある紙だけをスーツの内ポケットに入れた。
この笑顔にコロリと騙される女も沢山いるだろう……。
私は送り狼を無視して飲み続けた。
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