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第1章・蕎麦屋のアヤちゃん
時は昭和、場所は東京下町。三代続く蕎麦屋に綾(アヤ)ちゃんと言う女性がいました。
蕎麦屋夫婦の一人娘で昼間はデパートで受付をやっていて、仕事が終わると帰って、蕎麦屋を手伝う孝行娘でした。
そんなアヤちゃんには、心に決めた人がいました。小学生の頃に、両親を事故で亡くした、山田純君です。彼は大親友だった蕎麦屋の大将、島本クロの家に引き取られ、アヤちゃんとは兄妹の様に育ったのです。
ジュンは優しく可愛いアヤが好きでした。将来はお嫁さんにしてやるとまで、幼い約束を交わしていたのですが。彼が家具職人の道を歩みだしてから、めっきりアヤとは、親しく無くなってしまいました。
男の子はそんなものかと思っていたのですが。最近は口すら聞いてもらえず、父親のクロと喧嘩ばかりしています。
アヤちゃんは何が原因なのか、私の事を嫌いになったのか、他に好きな人でも出来たのかと、気を揉んでいました。
そして今日も何故か毎晩食事に来る、ジュンを見付けてアヤは心踊るのでした。
ですがジュンは、相変わらず冷たく接するのでした。
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